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2017.08.12

UXはIoTだけのものじゃない

こんばんは。マーケティングコンサルタントの佐藤友子です。User Experienceっていう言葉を知っていますか?『顧客体験価値』と言われるもので、お客様が体験することにどんな価値があるか?っていう意味です。モノが豊かになってきて、単純に品質で勝負するのが限界になってきている現代では、User Experience(以後UXとします)が求められています。

 

だい〜ぶ前、こんなCMがありました。

日産セレナの『モノより思い出』というキャッチコピー・コンセプトの車です。1999年のCMだったそうです。以後、『モノより思い出』のコンセプトが革新的であると消費者に好評で、2004年まで使われていた模様です。2007〜2009年では国内のミニバン部門で、3年連続販売台数1位を獲得。日産のサイトでのリリース記事はこちら。

 

ちなみに、1999年の車のCMは、トヨタが『Drive Your Dream』 でUXに寄っている。スズキが『小さく見えて中が広い』で性能。ホンダは『幸せづくり研究所』とUXだがちょっとよくわからない(アダムスファミリーが懐かしいw)。ダイハツは『テーマは性能』でまんま性能。マツダは『使えるクルマ 楽しいクルマ』で保証推し。(唐沢寿明さんが若い。。)※動画なのでクリックすると音が出ます。ご注意ください。

 

国内のクルマメーカーを比較してみても、日産の『モノより思い出』というキャッチコピーと、家族がクルマで出かけることで楽しい思い出が作れる。という体験にフォーカスしていたCMは今見てもダントツ伝わるなぁと思います。

 

Diorに学ぶUX

 

現代も『モノより思い出』の時代である。そしてモノの性能は限界にきているが、その分技術が発展し、これからはIoT(Internet of Tool)の時代とも言われている。VR(Virtual Reality 仮想現実)であったり、車の自動運転などモノ自体が動作を記憶して動けるようになると言われていたり、同じ体験価値でも『モノ』の変遷が起きている。では現代の『モノより思い出』はIoTじゃないとできないのだろうか?私はそうじゃないと思う。

 

再度言うが、性能がいいのは当たり前になっている。ということは、商品提供をしていく以上、性能をスタンダード以上に上げておく必要があるっていうのは、前提として持っておいてほしい。その上で現代も、『モノ』ではなく『コト』を売る、体験を売るという視点に変遷してきている。今一度、あなたの商品の『ウリ』を見直してみてほしい。『モノ』だけにフォーカスしてはいないだろうか?

 

例えば、私は化粧品はDiorさんが好きでメイク用品は愛用しているんだけど(ナタリーポートマンがステキだからっていうアレっぷりと、あとはデザインが微妙に攻めてるところが好き)、毎回新作のシーズンになるとDMが届く。

 

※ちょっと前に届いたDM

 

DMにそんなに注目したコトはないかもしれないが、化粧品のDMは大概セールス目的では作られていない。スタイリッシュで美しい、ポスターのようなDMが届く。化粧品は「美しくなるためのもの」なので、とびきり美しい女優やモデルを起用して、世界観を見せていたりする。しかしこのDMのようなメイクをして、よ〜し!明日はこれでデートに。。となるわけではない。(彼女がこのメイクできたら、ちょっとびっくりするよね。。)そういう目的の体験価値ではないのだ。『モノより思い出』のようなアプローチではない。『モノから思い出』なのではないかと私は考えている。

 

このDMの材質は紙なのだが、つるっとした上質な厚紙で、とても美しい。紙と言ってもいろんな材質があるが、ティッシュから新聞紙、和紙や厚紙などとても幅広い。チラシのような紙を受け取ると、「あ、チラシだな」って思うだろう。チラシが普段どういう扱いを受けているか?と言うと、ポストに入っていて興味がなければほぼ捨ててしまうのではないだろうか。ココで、このDMという『モノ』を受け取ることでどんな顧客体験価値を提供したいのか?と言う視点で考えてみたい。

 

お客様にどんな気持ちを得てほしいか?

 

ココでDiorさんのコンセプトについて特徴や要素を分解してみたい。

・コンセプトは「美しい女性をさらにエレガントに、エレガントな女性をさらに美しく」

・ハイブランド

・海外セレブやスーパーモデルを起用

・女性の社会進出がキッカケで発祥

・都会的

・デザインが革新的

と言った特徴のブランドを愛用する顧客は、どんな『体験価値』に喜ぶか?と言う風に考えてみる。身近な日本人モデルよりも海外セレブ、かわいいよりはエレガント、チープよりは高級。フレンドリーよりは孤高な感じ、などなどと考えて行った時に、じゃあ紙質はチラシのような薄い紙で〜とはならない。同じように、写真やフォントなど、どのように世界観を伝えていったらいいのか?ということが決まってくる。つまり、これらの要素を総合してDM1通のパッケージができ、そのDMという『モノ』を顧客が受け取った時に『嬉しい!』と言う体験を得れるコトになるのだ。なんとなくピンとくるだろうか?伝わっているだろうか?

 

あなたが普段使いできる『体験価値』は?

 

難しく考えずに、今すぐにできることを考えてみてほしい。例えば、美しくて高級な用紙でDMを送る必要は必ずしもない。ということは前述の通りだが、例えば商品を納品する時に手書きのメッセージを一言添えて送ってみる、購入者に合わせたちょっとしたプレゼントをしてみる。などなど、お客様と接触する時に、商品を通してなんらかの『体験』をしていただくことはできないだろうか?パッケージや商品そのものだけが『商品』ではない。お客様の気分が上がる、ほっこりする、そんなことはなんだろうか?ちょっと考えてみよう。『モノから思い出』に紐付けることは、何かできないだろうか?何も特別なことでなくてもいい。普段使いでいいのだ。

 

『品質がいいのは当たり前のUXの時代』に求められることは何もIoTだけではない。どんなコトにも隙間はあるし、盲点はある。できない理由を探さずに、これならできるんじゃない?ってことを一つでも、明日すぐにでもやってみてほしい。あなたのお客様は、きっとそれをワクワクして待っているハズだから。

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