情報のパンデミック
こんばんは。佐藤友子です。きょう乗ったタクシーの運転手さんが「新型肺炎が流行っているから、中国人は乗せない」と言ってました。
(ブログランキングの応援ありがとうございます。今日は情報のパンデミックについてです)
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「感染したら怖いなと思ってね」
私はタクシーの配車アプリをよく利用するのですが、今日はDiDiを使いました。よく喋る運転手さん曰く「DiDiって中国の会社でしょ?だからかな、中国のお客さんが多いのよ。でも今(肺炎が)怖いから、ワタシね、中国人は乗せないようにしてるの。だって、空気感染でしょ?」だそうです。
(道を説明するのが下手な私は、行き先を指定できるタクシーの配車サービスはめっちゃ助かってます。)
中国人観光客を乗せたバスの運転手さんが、肺炎に感染したというニュースもありましたから、怖くなっているのもあるのかもしれません。「そんな、中国の方かわいそう!差別だ!」と思う方もいるかもしれませんし、運転手さんみたいに不特定多数と関わる方なんかは「そうはいっても綺麗ごと言ってられないよ!この人の言うこともわかるなぁ。」と思われたかもしれません。あなたはどうですか?
怖いのは、〇〇の感染である
せっかくなので、医療的に解説をしてみますと(昔とった杵柄ですね)、そもそも新型コロナウイルスはまだ全貌がわかっていないので、私たちはできる限りの予防をするしかないんですよね。
報じられるニュースや記事などでは「国内で感染者が〇〇人になりました」「またも集団感染」「死者合計で〇〇人」などと、「新型コロナウイルスって怖いんだよ!」ということが声高に叫ばれているような印象を受けます。
肺炎って大きく、細菌性とウイルス性があるのですが、一般的には細菌性の肺炎が多いです。細菌の場合は分類上、「生き物」なので「抗生物質」が効きますが、ウイルスは生き物ではないので抗生物質が効きません。(ちなみに、風邪の場合ほとんどウイルス性なので、二次感染をしていないかぎりは、抗生物質をのんでも意味がないことが多いです)
また、ウイルスの大きさは、だいたい細菌の数十〜数百分の一でして、マスクなどのすき間に余裕で入り込んできます。さらにウイルスのほうが細菌よりも増殖速度が早いです。
こう聞くと、「コロナウイルスこえーーー」って思うかもしれません。いや、現実に重症化してなくなっている方もたくさんいるわけですから、怖いのは間違いないですよね。
けれど、本当に怖いのは、情報が人から人へと世界的に感染拡大、つまりパンデミック化することです。
片手おちの情報で困るのは誰?
ビジネスの世界でもよくあることでしょうけれど、インターネットや書籍、セミナーの講師が言ったことを鵜呑みにしてしまう人はとても多いです。私はこれはとても怖いことだと思っています。
例えばニュースなどでは「感染者が増えてどうなった!」という恐怖の部分に強くフォーカスがあてられ、WEBの記事とかになると、さらに表示する文字数が限られるので「新型肺炎感染者、さらに増大!」みたいな部分だけが切り取られるのです。それで、あまりよく知らないタクシーの運転手さんとかが「中国人は乗せない」とか思ってしまうわけです。
それもそのはず。医療関係者でもなく、さらには専門家でも全貌を解明できていないので、一般の方なら仕方のないことでしょう。メディアは影響力の大きさを活用して、もっと予防法を情報としてパンデミックさせてくれたらなぁ。と私は思うわけです。
片手落ちの情報で困っているのは、よく知らないために情報に踊らされる人や、風評被害をくらう人です。
肺炎も情報も感染を予防せよ
もうちょっと新型コロナウイルス に突っ込んでみると、空気感染とは言いますが、たんに同じ空間にいるからといって感染するわけではありません。基本的には、咳やくしゃみなどで排出される「飛沫(ひまつ)」にウイルスが含まれているので、常に空気中をウヨウヨしているというイメージとは違います。「洗濯ものを外に干しておいたら、ウイルスついちゃった」みたいな感じではないということですね。
さらに、厚労省が発表している情報によると、現在(2020年2月10日)のところ実際の感染経路は、空気ではなく飛沫や接触(ウイルス保有者が咳などをする際に口を押さえた手を介して感染する。つり革とか)であると確認されています。ですから、感染した可能性がある人は、マスクなどで飛沫を飛ぶのを予防すること、できる限りの外出を控えること。予防する立場の私たちは、人混みを避ける、うがいや手洗いをしたり、乾燥に気をつけるなど、できる限りの予防をした方が良いでしょう。
さらに、高齢者や基礎疾患(糖尿病や心疾患など)を持った人は重症化しやすいようで、このあたりは普通に肺炎や感染症のコンセンサス(共通意見)と言えましょう。
ちなみにマスクは意味がありますか?とたまに聞かれるのですが、完全のは防げませんが(マスクの網目よりもウイルスのほうがはるかに小さいので)、意味はあります。「ゴホン10万、ハクション100万」という言葉があるのですが、イメージどおり、咳をすると10万、くしゃみをすると100万個の飛沫が飛ぶという意味です。つまり、基本的には飛沫によってウイルスが体の外に出るので、感染者は飛沫を出す量を、非感染者は飛沫を吸い込む量を減らすことは効果がある。と言えるわけです。
一説にはくしゃみの初速は時速320kmとフェラーリ並みのことが言われていたりしますが、これはデマで実際は成人男性でも20〜60km/hくらいです。ほら、イメージが一人歩きすると、こうなるんですよ(笑)。
高機能マスクというのもあるのですが、実はフィルターの機能云々よりも、すき間なくマスクをフィットさせることの方が難しくて、マスクがあれば安心!というわけではありません。たとえば私たち医療従事者が結核患者と接する際には、N95という鳥のくちばしみたいな、ヤンキーが愛用しているやつっぽい風貌のマスクをつけるのですが、もう苦しくて長時間つけてられません。マスクをフィットさせるのって、実はすごく難易度が高いんですよ。
ということで、まとめますと、私たちにできる予防策としては、
・外から帰ってきたらうがい手洗い
・できるだけ人混みの多いところはさける
・基礎疾患がある人や高齢の方は注意(CDCの報告によると、中間年齢は59歳とのこと)
・外出する際はマスクをつける(普通のでよい)
・加湿器などで湿度を保つ
くらいでしょうか。他に何かあれば、補足するので教えていただけると助かります。感染した人や、疑いがある人を差別するのではなくて、助けてあげれるような社会にしていきたいですね。情報のパンデミックは、本来そのような使い道であるべきだなと、強く感じたのでした。ビジネスもそうありたいものです。
人の噂しかり、風評被害しかり、世の中の「雰囲気」が伝染して一定数を超えると、強い影響力になる。というのは事実でありましょう。もしワクチンがあるとしたら…ぜひこれはご自身で考えてみてくださいね。